ペカチカほいほいのブログ

ギャンブル歴50年、浮き沈み人生で出会った楽しい出来事の数々。

クズ屋の事件簿「張り込み」

会社を興してからこれまで泥棒に10回入られてます。
※泥棒の仕業と判明したのが10回で、気づいてないのもあるかも。


入られたのは・・・・
若いころアパートのガラス割られて20万盗られたのは置いといて、
①パソコンショップ1回目   ※警察コメント・・内部犯行
②パソコンショップ2回目  ※警察コメント・・外人窃盗団
③秘密の工場に計3回 ※警察沙汰にできず
④福岡支店2回  コソ泥らしい
⑤本社3回    コソ泥っぽい
※一時期中古パソコンショップを開いてました。ドロボウ2回で潰れました。



上記事件はすべて刑法的には未解決です。



さて今日は③秘密工場の第1回目の「ドロボウ事件」のお話です。
第3回までありますのでご期待ください。


オッサンには秘密工場がありました。所有はしていません。使ってただけ。
かなり田舎の山奥の人里離れた場所です。
使った理由ですか?
答えは簡単! 人に見られるとヤバイ作業をするためです。



その工場の運営はウチの社員3名と、
工場の所有者「小山工業(仮名)」を下請けで使ってました。
小山工業の小山社長と従業員2名、ウチと合わせ合計6名。



その工場は昔陶磁器の原料粉を作る工場だった、
破砕設備、焼却設備、焼成設備が残ってた。
レアメタルの抽出に必要な設備がバッチリあったんです。
しかも人里離れた場所。臭いで文句の出ない場所だった。



違法行為かって?


ん~  微妙です。 その地域では違法ではありませんが、
都市部でやるとお縄です。



ただ田舎のこの場所でも苦情が出ると「操業中止」です。
ですから人里離れた場所でないとダメだったんです。




その工場は屋根は有るが、壁の無い工場で、
工場で処理するための「原料」を保管するための倉庫も
壁は無く屋根だけ、雨風入り込むのが難点でしたが、
ただ人に見られず作業するにはうってつけの場所だった。



近くを走る国道から林道を1Km登った場所です。
誰かが盗みに入り込むことは考えにくい場所でした。
また泥棒が来たとしてもレアメタルの「真っ黒の粉」です。
価値なんて解るはずないと考えてましたね。





ある日、処理を指揮するため出張させてた技術部長から連絡が来ました。



「投入数量」と「仕上がり数量」が合わない。



オッサンは言います。
「歩留まり計算」をやり直せ、間違ってるだろ。
それから原料保管中に濡れてないか調べろ。
雨降ったんじゃないか? ※濡れて水分が増えたかもしれない。
水分を多く含む原料は「焼く」と水分が蒸発して「歩留まりが下がる」


部長
「合いません、どうも仕上がりをヌカれてるようです」



「どれくらい違うんだ?」



部長
「12%下にぶれてます」



※50tの生産予定が45tしかできてないってことか・・・・



「そっちの現場の連中に知らせたのか」


部長
「何も言ってません、連中を疑ってますから」



「これからすぐ行くわ」
「小山工業の連中には俺が来ること黙っとけ、夜8時には着くから」




これは一大事です。かなり高く売れる製品です。
事実なら警察沙汰です。大赤字です。
本社から車で6時間の道を駆けつけます。




夜8時頃、工場到着。
工場には原料を入れた袋(フレコンバッグ)が100袋、
出来上がった製品を入れた袋が40袋積んでありました。



この出来上がった製品40袋の総重量が43t
これを製造するため投入した原料から逆算すると48tできるはず。
なのに製品量が5t足りない、これは異常な数値だった。



出来上がった製品袋を計ってみた。
袋には計量した時の重量をマジックで書き込んである。
書き込まれた重量と、今計った重量は僅か数Kgの差だわ。
湿気を吸うことを考慮すると誤差の範囲だ。
秤は正常と言う事だわ。





ここの製造工程では
完成した製品の計量は小山工業がやる。
秤も小山工業所有の秤だ。
ウチの社員の作業は投入、原料の運搬、伝票記入などで
炉の管理や粉末の袋詰めなど、技量を要する作業は「小山」の担当





部長と話す。
「どう思う?」


部長
「あいつです、あいつが抜いたんですよ」


小山んとこの作業員の池田(仮名)が抜いたんですよ。



部長
「アイツは昔※顔料屋に勤めてたから、コバルトの価値も売り先も知ってます」
「多分夜中やってきて抜いたんでしょ」
※顔料とは陶磁器に塗る着色料のこと(瓦の青色はコバルトを使う)



「いつからヤッテると思う」



部長
「多分・・・ここで作業を始めた最初の頃からでしょう」
「ここの設備を動かしたのが半年前、これまでの生産量は約200t」
「1割として・・これまで20tは抜かれてるかも」
「4日前に上がったのも抜かれてますよ、昨日か一昨日ヤッタと思います」



部長が怪しんだのは、計る瞬間をウチの社員は誰も見てないからです。
ウチの社員は原料投入工程を担当してて完成品の計量は目が届かない。





池田が秤をごまかすのは簡単でした。



小山の社長は炉の管理、もう一人はフルイやベルトコンベアを担当。
計量は池田が一人でやります。
①製品が仕上がって計量するとき、秤の風袋をマイナス50Kgにした※。
②本当の数量に対して50Kgマイナスで計量値がでる、それを袋に記入
③ウチの社員は出来上がった製品袋に書かれた数量を伝票に記入するだけ。
④池田はいったん帰宅して、夜中に工場に来て袋から50Kgずつ抜いていった。
なんてたって鍵はかからない、誰にも見られない、壁の無い工場だ。
※フレコンバッグの風袋は3Kg、通常は計量時マイナス3Kgに設定します。





犯人は池田に決めました? 


状況証拠は池田なの。物証は無いけど。


物証を掴むことにした。




翌日
窯業向けコバルト顔料の取り扱い大手〇〇産業へ電話。
「コバルト品位45%くらいの粉末スクラップそっちに入ってない?」
「数量はここ半年で10t~20tくらい」
「小分けで持ち込んでるか、まとめてトン単位で持ち込んでるか不明だけど」


先方
「ちょっと調べてみる、どうしたの?」



「ウチの工場から盗んだのがいる」
「ウチのは不純物に銅とアルミが混ざってるからすぐわかるはず」



先方
「社長とこのは良く知ってるから出ればすぐ聞こえてくるよ」
「少し時間頂戴」



まずは流通を調べた。絶対逃がさない、捕まえる。




その日オッサンは秘密工場へ行きません。
社員寮で作戦を練ってます。



工場にいる技術部長に電話
「今ある原料100tを5日で処理しろと小山工業に言え」



技術部長がウチの社員、小山と小山の従業員にハッパをかける。


「相場が落ちそうだから大特急で処理する。」
「生産目標 1日10t、5日で50tだ」




これで池田が動くか、
ここ数日で毎日10tの製品ができる。毎日500Kgヌケルぞ。
ヤツの車は軽トラ、その気になれば500Kgは積めるが
1人だとキツイだろ。仲間かセガレか共犯も連れてくるはず。


もう秋も終わろうとする頃だった。
標高の高いこの場所は夜中5度以下まで下がる。



オッサンは寮に戻ってきた部長と社員に言った。


「明日の夜から工場で夜中見張ることにする」
「夜工場にウチの車が止まってると池田が入ってこないだろうから」
「だから夜9時に工場まで俺を送ってくれ、そんでお前らすぐ帰れ」
「俺一人で見張る、来たらぶっ飛ばす」
「大丈夫よ、お前らは明日の仕事に備えろ」



みんな一緒にヤルと言うけど、1人でやってみたかった。





さて、かなり原始的な方法の「張り込み」です。
実は相当ワクワクでした。カッコいいじゃありませんか。
夜ドロボウを捕まえるなんて、滅多に経験できません。
ご心配なく、プレハブの事務所はあります。
暖房もあります。電気も来てます。
灯りは点けれませんけどね「張り込み」ですから。



ソファに布団を敷いて寝っ転がりながら
不審な物音や、入ってくるかもしれない車のライトに
目も耳も澄ませます。刑事ドラマの主役になった気分だった。




「金属バット」「スコップ」など戦う用意もバッチリ。
酒もツマミも弁当もバッチリ
なんとしてでも捕まえる。



で・・・・・どうなったかと言いますと・・・・


2晩張り込んだ。  怖かったわ・・・・



一番近い人家まで約8Km、山奥、森の中です。助けは呼べません。
サルをよく見る場所だし、イノシシの掘った後がアチコチあるとこ。
山奥の深夜をナメてたわ。あんな怖いと思わんかった。
夜中は超静かで、得体の知れない動物の声がず~っと聞こえるのよ・・・・



「熊注意」の看板がいたるところにあるとこです。
もし熊が出たらプレハブから一歩も出ないと決めました。




ただねえトイレが事務所の外にあるのね・・・
酒飲むでしょ・・・冷えるからすぐオシッコしたくなる。
こればっかりは我慢できない。



トイレは事務所から30m離れてました。
30mって結構な距離ですよ。
熊が襲ってきたら逃げれないと思う。
金属バットを握って、意を決してトイレへ向かいます。




その夜は半月でぼわ~っと薄明かりです。
神秘的な雰囲気です。風もざわ~っと吹いてます。
トトロのような八墓村のような・・・・
ヌエの鳴く夜は・・みたいな・・・
最初に頭に浮かんだのは八墓村だった。




外に出て30Mくらい先のトイレに向かうとねえ・・・
何ちゅうか・・・森の冷気と・・・霊気がねえ・・・・


ふわ~~っと漂ってくるんだわ。


神秘的な怖さが・・・・ヒシヒシ来るのね・・・・


怖かった・・・・何が怖いかわからないけど怖いの。




夢か幻か現実か・・・・いまでもハッキリしないんですが・・・


夜中・・半分うつらうつらで外に目をやると・・・


イノシシの群れが外を歩いてた。


その先頭のお母さんイノシシがオッサン見て「ご苦労さん」って


そう言ったの・・・・夢かなあ・・・



張り込んだ2日間・・・・池田は来ませんでした。


作業は順調に終わり、歩留まりも計算通り、


今回は怪しいところは無かった。




〇〇産業から連絡も来ました。


ウチから盗まれたと思われるコバルトがありました。


それを持ってる会社へ行って事情を聴きました。


おそらく架空の会社と思いますが「〇〇商事」から買ったと言います。


「盗品の証拠があればそれ持ってこい、そしたら詳しいこと教えてやる」


そう凄まれて退散しました。





警察を呼びました。


お巡りさんが「盗難被害届」受理できないと言います。


「なんで?」と聞くと


「敷地の入り口に鍵も無い」「倉庫に壁も無い」「防犯装置も無い」
「盗まれた証明もできない」「状況説明もわかりにくい」


お話にならない・・・そうです。


その後、防犯カメラ、敷地入り口にフェンスを設置しました。



池田はパトカーを呼んだ次の日から来なくなりました。


ヤバいと思ったんでしょう・・・・



ひとつ引っかかるのは・・・小山工業の小山社長が・・・・


その頃中古のポルシェ買って・・・・すぐ手放したらしいが・・


貧乏社長なんだが・・・・いったいどこからその金が・・・・・



そういえば部長が・・・・


小山社長も噛んでたりして・・・そう言ってたなあ・・・