ペカチカほいほいのブログ

ギャンブル歴50年、浮き沈み人生で出会った楽しい出来事の数々。

正義は負ける、クズ屋は勝つ!

香港を拠点とするスクラップ屋のシンジケートが数グループありました。
その1つ、名付けて「陳さんグループ」としときましょう。
彼らがやらかした事件のお話です。



今から15年前、陳Gは日本各地に6社の支部を置いてました。
関東地区に4か所、名古屋1、仙台1でした。
日本以外では台湾、中国、香港に10社ほどあり、グループを構成してます。




もともと日本から電子部品を買い付けて
世界中に供給するビジネスの草分け的存在で、
電子部品では世界中に顧客を持っていました。
オッサンの親友Tさんと長い付き合いのシンジケートです。
オッサンの買い付けた電子部品もTさんを経由して供給されてました。



このグループは「売れるもんなら何でもOK」と何でも取り扱います。
見境い、節操、遠慮、恥もなけりゃあ、外聞も無いんですが、


カネと度胸と行動力は半端なく有ったんですね。


密輸のスペシャリストだったと思います。※未確認ですのでよろしく!




さて、陳グループは関東の某メーカー「K社」が新発売した商品の試作品を
入手しました。この新製品は画期的な製品で、
世界中から注目された商品でした。



メーカーが新製品を作るとき、
最初に試作ラインで製造方法の最終確認をします。
机上の設計と実際の生産ラインは別物なんですね、
試作ラインでは不良品が相当数出ます。
この不良の原因を解析して、製造工程の改良・部品の見直しなどをします。



新製品も最初のころは安定した良品がなかなか作れないんですね、
苦労を重ねて使用に耐えうる製品はできていきます。


製造ラインが安定して量産開始するまでに作られた試作品は
最新技術の結晶です。絶対にライバル企業にわたってはいけないモノです。



製品が販売開始されれば、各社その製品を簡単に入手できるので、
分解して、細部まで分析して、技術をパクったりと丸裸にされるんですが
試作段階で技術が流れるのは絶対に有ってはなりません。
ですからメーカーは捨てる時に凄く気を使います。



ところが・・・・・お粗末なことに・・・・
その試作品の廃棄されたモノが流出する事件が起きました。


流したのは「そのメーカー」のスクラップを一手に引き受けていた
川崎のZ社です・・・・



そこの工場長が陳Gにカネを握らされ、渡したんです。


細かな途中経過はパスしますが、この試作品は陳Gの倉庫でパッキングされ、
横浜港の保税倉庫に運び込まれたんです。
あとは船に積み込まれるのを待つだけでした。



ところが・・・・不思議なことに・・・
その試作品が保税倉庫に運び込まれたという情報が
メーカーK社に入りました。K社は緊急調査を始めます。
もちろん調査はZ社に及びます。



Z社の社長はK社に呼び出され、「流出元はおまえんとこだ!」
大至急保税倉庫のブツを回収するよう命令されました。
もの凄い損害だから覚悟しとけよ! なんて言われたそうです。
社長さんには寝耳に水でした。 ※真面目な会社だったんです。
あまりのショックでチビッたと言ってました。



社長は工場長に連絡を取ります・・・・しかし・・・
工場長は社長がZ社に呼び出されるのと同時に「ドロン」した。



さて、オッサンはここまで、この経緯を全く知りませんでした。
もちろんノータッチです、何の情報も知らなかったんです。
Z社長から連絡が来て初めて「コトの経緯」を知りました。


Z社長は窮地になってオッサンの顔が浮かんだそうです。
あの怪しい会社なら何とかしてくれるかも・・・そう思ったって





「なんとか回収してメーカーに戻したい」
「協力を頼む」


Z社長とオッサンは軽い知り合いでした。顔見知り程度です。
タイやフィリピンで仕事を出してくれる電機メーカーの出入り業者同士で、
合同会議でお会いして、名刺交換をしただけ・・・そんな関係です。
真面目で固い仕事をする会社さんで、
ウチのようなアヤシイ会社とは一線を画す会社さんでした。



仲良しさんであれば「よし!任せとけ!」と請け負うんですが、
これをヤルことでメリットが有るか不明です。
情報も圧倒的に不足してます。
なんせ今の電話で聞かされたばっかです。




解っている情報を整理することにしました。
①K社がZ社へ廃棄試作品が処理するために出した。
②Z社の工場長がそれを「どこかへ」横流しした
③犯人の工場長は行方不明だ
④ブツは「横浜の保税倉庫」にある、今輸出手続きを止めてる。
⑤シッパーは(仮名)日港友情企業㈱
⑥仕向け地は香港
⑦メーカーK社は「超激怒」してる。
⑧ブツは最新の薄型テレビの試作品である。



オッサンは⑧を聞いてすぐピンときた。これを捌けるのは3社しかない。
陳Gか、楊Gか、周G・・・・この中のどっかだ。
日港友情企業㈱の名前は知らんが、どっかのアンダー企業だろう。



連中に話を付けるのは難しい話じゃないが、カネはそれなりに絡む。
連中は最新技術の詰まった薄型テレビの試作品を手に入れた、
韓国か、台湾か、中国の売り先と商談も進めてるだろう。



オッサンはZ社長に確認事項を伝える
①解決金はいくら用意できるか?
②横浜税関からK社にリークがあったのか?
③横浜税関が保税倉庫入庫の情報をK社に流したのは合法か?
④薄型テレビじゃなくスクラップで輸出許可申請をしてるのか?




やっかいなのはブツの所有権はZ社になってることだ。
メーカーのK社が税関に「盗品だから返せ」と言える立場ではない。
Z社長は工場長が「横流し」したものだから「返却」は主張できるだろうが・・・
まずZ社が工場長を「横領か窃盗」で警察に告発して、
警察から「このブツ」は犯罪に関係すると証明を出してもらい、
横浜税関に輸出手続き中止と返却を申し出ないとならない。



時間がかかりすぎる。



シッパーのシンジケートも黙っちゃいない。
彼らにとっては盗品ではない。金は工場長に払い済と言うだろう。
日本の法律では「部長級」が了解すれば「会社の了解」とみなされる。
工場長は取締役部長だったようだ。Z社了解したブツと言い切るはず。
シンジケートの逃げ道はナンボでもある。



シッパーはサッサと通関しろと催促するだろうなあ・・・
中国ならお上の都合でメチャクチャやれるが、大日本国は
書類が整っていれば「通関手続きストップ」なんて長くはできない。
シッパーは手続き遅れに文句を言うだろう。



あ~~~ややこしい話になりそう・・・


「こんなときは・・・知~らない」でパスするのがベストだわ。



Z社長の回答を待ちながら・・・・探りを入れることにした。


3つのシンジケートに電話をかけましょう・・・か・・・ね・・・




最初の電話ですべてが見えましたよ。
案の定・・・・陳Gのヤッタことだった。


しかもその日の夕方・・・陳社長がウチに来るってさ・・・・
久しぶりに来日したから「飯食おう」ってさ・・・・



のこのこやって来た陳G総帥の陳社長とお付きの4名様を
近くの寿司屋にご案内して話を聞きました。


①Z社からテレビ買ったの誰なの?
なんとお付きで来てる若い衆が「あっ僕です」と即答しやがる
こいつの会社が「日港友情企業㈱」だった。


②今大問題なってるの知ってる?
「いえ、何か問題なんですか?」と来やがった。


③通関止まってるでしょ
「はい、もう1週間遅れてます」


④何で遅れてるかわかる?
「いえ、今横浜税関混んでるからでしゅかねえ」


⑤Z社の工場長行方不明だってよ
「えっ? さっきも連絡ありましたよ、工場で作業してるって言ってました」



もうねえ・・・呑気なもんだわ・・


誰が被害者かもわかんなくなってきた。


⑥あのテレビ屑はいくらで買ったの?
全部で30万です、あれはゴミ、付き合いで買ってあげたけどゴミだ。


何でも半年ほど前からZ社と取引が始まって、
ときどき安い電子部品を買ってるらしい。大した客じゃないって。



オッサンはバシバシ聞きます。
⑦あのテレビは香港持ってってどうすんの?
「中国の業者に押し付けて処分させます、埋めるか沈めるかですね」
「ホントは途中で海に投げようかと思ってるくらいです」
※これは冗談で、それくらい価値の無い荷物という事です。
今後良いものを取りたいから、
工場長の小遣いと思って買ってやったそうです。




K社とZ社と横浜税関は大騒ぎなんですが・・・・
ブツの現所有者さんは「役立たずのゴミ」と言い切ってます。
彼らは「こういう時は」ウソを言いません。
連中は価値を知らないんです。



この薄型テレビは液晶テレビではなく、プラズマテレビだったんですね。
陳Gはウチから何万枚も液晶を買っていきます。
中古液晶の扱いは世界有数ですが、プラズマTVはゴミと言い切った。
当時の中国では液晶だけが人気だったんです。



オッサン本題に入ります。
「そのテレビさあ、通関取り下げて返しちまいなよ」



「えっ?そんなことできますか?」
「返せるなら返したいですよ」



何の問題もなく決着つきそうです。



Z社の社長に連絡しました。


500万くらいで手打ちできそうって言いました。


Z社長は翌日涙流しながらウチに来ました。


ベンツのAMG乗って来たから500万受け取りました。


カローラバンなら300万にしてあげるつもりでした。



日港友情企業㈱さんに30万返そうとしたら要らないって。


その分半導体沢山下さいって・・・・いい子だわ~



えっ? ぼったくりって? オッサンが?


冗談じゃないわ、


あのZの会社って、いつもお高く止まって、いけ好かないの会社なの。


某電機メーカーの協力会って団体があるんだけどね、


オッサンも加盟しようとしたら「あの会社の先代社長」が


反対してウチ入れなかったんだから。