ペカチカほいほいのブログ

ギャンブル歴50年、浮き沈み人生で出会った楽しい出来事の数々。

山下純一と言う名前のベトナム人

仕事柄、ウチの周囲はインターナショナル(外国人が多かった)でした。


ウチに韓国人3名、中国人1名の社員がいたし、
取引先にはフィリピン人、タイ人、ミャンマー人、バングラデシュ人
パキスタン人、イラン人、イラク人、トルコ人、UAE人がいました。



さて、13年ほど前のある日、
オッサンが会社で荷下ろし作業をしていると、
1台のオンボロハイエースが入って来ます。
妙に愛想のよい男が下りてきて言いました。


「私にスクラップを売って下さい」



名刺も出してきた。


名刺に
 山下商会  代表 山下純一  と書いてある。


もうね、どうみても100%東南アジア人なの。
山下純一じゃないのよね。グエン・ビャンなんとかとか・・・・
そんな名前のはずなんだわ。



取り合えず
「何が欲しいの?」って聞くと・・・・・


いま荷下ろし中の液晶を指差して
「これ下さい」



「これ高いよ、オカネあるの?」


山下
「いくらですか?」



「何個欲しいのよ?」


山下
「全部欲しいです」



「幾らで買ってくれるの?」


山下
「今・・・売ってる価格を教えてください」



「ダ~メ、そっちが先に提示しな、そっちが高かったら現金で売ってやる」


山下
「少し待ってクダサイ」


・・・・どっかに日本語で電話をかける。


オッサンは親切です。
彼の横まで行って、メモに「シャープ」の7インチ液晶で
型番はLQ070・・だよと・・・書いて見せてやった。
山下はそのメモを手に取って、型番を電話相手に伝えてる。



オッサンはとっくに分かってました。
コイツはどっかの輸出屋に雇われて
関東のスクラップ屋を手当たり次第に回ってる
「ド素人集荷マン」だわ。



当時・・・毎日のように「液晶を売って下さい」と電話がありました。
会社まで押しかけてくる「にわか液晶バイヤー」さんが
いっぱい出現したんです。
「これは儲かる」と新規参入する外人さんがイッパイいたんですね。




オッサンはヒマだったんですね、荷下ろし作業するくらいだから
その日は相当ヒマだったんだと思います。
ヒマなもんだから・・・
彼がオッサンに提示する価格が楽しみになってきました。
当時日本で1・2位を争う液晶サプライヤーのオッサンに
彼は幾らの価格を提示するんだろう。
ちなみにその当時の価格は1台5000円ほどです。



電話が終わりました。
緊張の購入価格提示タイムです。



山下
「1台8000円です」



「なぬ? 8000円?」
「すぐ売ってやる、1万枚あるから、すぐ8000万持って来い」


山下の顔に「不安」がよぎったようです。


山下
「もう一回電話していいですか?」



「いいとも!、早く決めちゃおうぜ!」


山下は・・・・再度どこぞへ電話開始です。


電話終了!



山下
「すいません、間違いです。3900円です」




別にいいんです。コイツの程度はそんなもんでしょう。



多分・・・・・山下は雇い主(誰だか、何人だか知らんが)から
「4000円で買う」から集めて来いと指示を受けてるんでしょう。
100円抜いても1万枚だから100万儲かるとギリギリ価格を出した。
その心意気や「あっぱれ」です。



山下の売り先は・・・どうせ「楊Gか陳G」のアンダー企業に
1台4500円で集めろと言われてるんでしょう。
で・・アンダーのリンか周が香港まで輸出して、
1台5000円で香港シンジゲートが買い上げるって流れです。
ウチは倉庫まで取りに越させて5000円だから最上級価格でした。




8000円は客の気を引くためのインチキ価格です。
最後は3500円程度へ絶対値下げするんですよ。
連中の値下げする言い訳が
「1万枚なら8000円だけど、100枚だと3500円なの」
なんて言って値下げするパターンですね。
「量があればもっと高く買うよ」と言うんです。


まさか1万枚目の前にあるとは「山下君」も予想してなかったのね。



当時パチンコ台の解体をしている「小さいスクラップ屋」だと
50枚とか100枚持ってるとこが多かったから
ウチも「大したことない」と思ったようです。
ウチを知らないんて「ど素人 OF THE素人」ですわ。



さてスクラップ取引の特色はいろいろありますが、
普通の製品商売と「完全に違うところ」がこれ↓↓



普通の製品は大量に買ってもらうと単価が下がりますよね、
大口値引きしますよね。
でもスクラップは違うんです。
量が増えると単価が上がります。値上がりするんです。
これがスクラップ商売の「特徴」です。



しかも売り先は「客じゃありません」
仕入先が「大切なお客様」なんです。
カネを払うほうが「立場が弱い」という特異な世界です。
カネよりモノを持ってる方が強いんですね。





その後・・・・山下純一はウチに頻繁に出入りすることになります。


しょうもないスクラップを持ち込んで「買ってくれ」だったり


ときどき倉庫内をウロウロして「これ売ってくれ」だったり・・・


普通怪しいヤツは倉庫内に入れないんだけど、


山下純一は「愛嬌」があって「憎めない」男だった。


彼がベトナム人なのは人相で分かったし、本人からも聞いた。




ただ・・・・オッサンも策士です、越後屋なんですね。


普通得体の知れないベトナム人なんか絶対出入りさせませんが


布石があったんです。



その頃、2005年頃は中国が爆発的な発展をする直前期でした。


「いずれベトナムもそうなる」


オッサンは確信を持ってました。


「中国の次はベトナムだ」
「ベトナムの高度成長でスクラップが売れるはず」


この山下純一を育ててベトナムのエージェントにしちまおう!!


こんな壮大な計画を考えとったんですわ。


彼にスクラップをイチから教え込もうとしてました。


山下純一もヤル気満々のように見えた。





ところが・・・


それから少しして、山下の音信がプッツリ途絶えた。




半年後くらいでしょうか・・・・・ヤフートップ記事に


「ベトナム人窃盗団逮捕される」の記事を発見!!


埼玉県川口署は昨夜関東全域で
鉄スクラップや重機、車両などを盗んだ疑いで
ベトナム国籍の「なんちゃらかんちゃら36歳」ら8名を逮捕しました。
「なんちゃら」らは半年ほど前から、
建設現場や駐車場から鉄スクラップ・車両・重機などを盗んでいたようです。
余罪は数百件に上ると見て全容の解明を急ぐ方針です。



日経新聞社会面には山下純一の「顔写真」もバッチリ写ってる。
NHKニュースの関東版でも写真がバッチリ。



この事件はオッサンのせいじゃないからね。



なんで山下純一と名乗ったのか聞いたんだけど・・・忘れたわ。


たいした理由じゃ無かったはず。



その後・・・・2年ほどして・・・・多分出所して・・・・


山下純一は・・・またウチに「ひょっこり現れた」・・・・・


もちろん「今後一切出入り禁止」を申し渡したんだが・・・・


相変わらず・・・・愛嬌のある男だった。