ペカチカほいほいのブログ

ギャンブル歴50年、浮き沈み人生で出会った楽しい出来事の数々。

クズ屋の事件簿「消えたレアアース」

もう・・・だいぶ経ちますね・・・・・


尖閣諸島近海で日本の領海を侵犯した中国漁船が
巡視船に突っ込んで拿捕された事件。
たしか田中真紀子さんが外相で「スグ釈放」しちゃったんですね。


あの後・・・・中国が「レアアースの禁輸」という報復措置を繰り出した。


あっという間に1Kg=500円のレアアースが1万円に値上がり!
※実際は種類によって値上がり差があります。イメージで見てくださいね。



レアアースはハイブリッドカーの
「モーター磁石」「ニッケル水素電池」に多く使います。


これが無いとTOYOTAもPANASONICも大変困るわけです。



当時日本で「レアアース」を扱うクズ屋はウチ含めて数社でした。


一気にスクラップの取り合いとなりました。
精製屋さんからウチに「スクラップを供給できないか?」と
引き合いが沢山来たんですが、要求される量が半端ない。
「10t単位で欲しい」と言われるんですが、無理です。
そんな量は持ってません。対応できないと言うしかなかった。
パソコンのHDDから抜き取った「小量」しか持ってなかったんです。



どこも物量が手配できずに困ってました。相当困ってたんですよ。



ある日、聞いたことない会社から電話がかかってきました。



「社長、レアアースを売りたいので担当者お願いします」って
言ってます。



なぬ? レアアースを「買いたい」じゃなく「売りたい」だと・・?


オッサンの直感は一発回答よ。
「詐欺!」 「一億パーセント間違いない」


毎度のパターンです。
モノが足りなくなると必ず詐欺師が現れます。
有るよ有るよと見せかけて、「金さえ払えばすぐ送るから」と言われ、
モノ欲しさで払っちゃうと・・・・ドロン・・・
そんな話に飛びついて大金をパーにした会社が
大手・中小含めゴマンとあるんです。



まあ・・・取り合えず電話に出ることにしましょう。



「あ~~なるほど、興味あります。お会いして話しませんか?」
実はオッサンがそう回答せざるを得ない・・・オモロイ話でした。




かいつまんで言うとこんな話よ。↓↓↓


私は日本の北千住で貿易会社をやってる周と言います。中国人です。
私の叔父さんは内モンゴルでレアアース鉱山を経営してます。
1次精製した3元合金をそちらへ輸出したいと考えています。※1
中国政府の輸出規制で我々鉱山会社は製品がダブついて困ってます。
在庫を現金化したいので相談に乗ってくれませんか?
日本へ送る方法は社長さんのお知恵を貸してください。※2


※1 ネオジム、セリウム、ランタンの3種類のレアアース合金 
   ニッケル水素電池のミッシュメタルに使います。
※2 要は密輸でも、向け先ゴマカシでもいいから買ってってこと。



いい話だわ・・・・ウチ向きの怪しい話だわ。


とても微妙なお話になるんですが・・・
正論を言うと・・・違法です。


彼らがウチに連絡してきた理由(ワケ)もわかった。


このストーリーは大手企業・マトモな企業は受けられない。
ブツが足りないからホントは受けたいけど、
あまりにもヤバい橋を渡る羽目になる。
コンプライアンス上・・・大問題です。



では「マトモじゃない会社」どっかにいないかしら?


いるじゃない! あ・そ・こ・


そう、ナイスチョイス! だってウチならヤレルから。
何だってヤっちゃうから。



この話ねエ・・・裏にどっかマトモな会社が噛んでるはず。
最後まで判んなかったけど・・・
どっかがウチをあっちに教えてる。



中国行くことにしました。北京経由で行くか?西安経由にするか・・・・
北京経由が近そうなので西安の観光は断念しました。木馬桶見たかった。


周さんとオッサンとウチの中国人社員で内モンゴルへ飛びます。
北京で乗り換えて・・どっかの地方空港で降りて・・・
車で8時間走って到着です。余りにも遠くてどこがどこだか・・・・


着いた工場・・・・あまりにも臭い・・・硫酸の臭いで死にそうです。
ただしマトモな工場です。マトモに生産はしてるという意味です。
たぶん・・・・年に10人は死人出そうですが、
モノは確にあります。



打合せ終わったらすぐ8時間かけて帰るスケジュールです。
さっさと決めちゃいましょう。



鉱山の社長の大演説が始まっちまった。
中国政府は俺たちを殺そうとしてるんだ・・・
レアアースなんて日本しか買わないのに、
日本に売れなきゃどこに売るんだ?
ドイツだって韓国だって日本の1/100しか必要としないんだぜ。
見てくれよこの在庫! 同業者で首ツったのが2人もいるんだぜ。
従業員の給料と工場の維持費で金は全部パーだ。
とにかく俺は少しでも換金したいから協力してくれ。


オッサンから質問
①日本以外への輸出はOKなのね?
②インドネシアへ輸出経験は?
③希望価格は?
④支払い条件は?


価格は魅力タップリだった。国内相場の1/8位。
現地仕入れが2000万くらいで、国内で1億5000万で売っちゃおうって感じ。
これ・・うまいこと日本に入れたら大儲けです。
ヤバい橋を渡ることばかり考えてるオッサンです。



オッサンの提案
①売り先はインドネシアの会社にする。
②そこで2次精製して、最終的にドイツの会社に送る「こと」にする
③インドネシアに入ったら、コンテをすり替えて日本に送る
④インドネシアから日本に入れるときは製品ではなくスクラップとする。
⑤インドネシアには日系のHDD製造工場、電池工場あるから疑われない。


ストーリーは決まったんだが・・・・
金の払いで揉める。当然である。


先方はTT(現金振込)で全額入金されたら、コンテナを港へ走らせる
ウチはBL(船積証明)出たら50% 日本着いて50%払う。


とんでもない差が有るわけです。


こんな話はちょっとやそっとじゃ妥結しませんから、
妥協案を出す。


そしたら・・コンテナを陸送でシンセンまで送ってくれ、
シンセンにコンテナが着く日に俺もそこに行ってる。
社長さんもそこに来てくれ。
コンテナが到着して一緒に中身確認して
問題なければ、そこで全額キャッシュで払う。


どう?


「よかろう!」


商談成立、こんな臭いとこに長居は無用。
さっさと車で地方空港へ向かったんですが・・・・
峠道で大渋滞、車がまったく動かなくなった。
この峠を登り切って、延々下って地方空港なんだが・・・
もう全然動かないの。
しばらくして・・・道路を上から何かが流れてくるんだわ。


渋滞の車からみんな外に降りて・・・なんだべ?と・・・


何だと思います? 


それがねえ・・・軽油がじゃぶじゃぶ流れてくるんだわ。


多分坂の上の方でタンクローリーかなんかが事故ってるんだわ。



近隣住民がバケツやらなんやら持って来てスクイ始めた。


しかも・・・・タバコ咥えてスクってるじゃあ~りませんか。


生きた心地がしなかったわ・・・幸い火は出なかった。



話は戻ります。


結局予定した飛行機には乗れず、だって渋滞で7時間足止めよ。
空港のある街に着いたのが出発して15時間後よ。
チケット取り直して北京経由シンセンへ


シンセンの「部品屋」を3社集めて協力要請。
「おまいらの知らないレアアースっちゅうもんを買った」
「内モンゴルからシンセンに運び込む」
「仕入先に荷物到着した日に2000万円払わにゃならん」
「日本からそんな大金もって中国に入国できない」
「2000万立て替えて、輸出のハンドリングしてくれる会社を募集中」
「立て替えてくれる2000万は日本で返してもいいし、部品で相殺もOK」
「ちゃんと輸出できたら経費のほかに手数料で300万円払う」
「しばらく続く商売だから悪い話じゃないよ~だ」
「やりたい人は手を挙げて」



「はあ~い」と3社手を上げる。


この3社は「ウチに気に入られたい」んですね、
ウチの持ってる「半導体・電子部品」が沢山欲しいんです。
だからナンボでも協力は惜しみません。


結局・・・・3社が順繰りに受けてくれることになりました。


A社・B社・C社で今月はA社、来月はB社と順繰りです。


A社はC社の社員だった「P」が独立した会社です。
C社の子会社っぽいとこもあれば、単独ビジネスもやるという
中国独特のシンジケートってスタイルです。


A社の「P」社長に内モンゴル社長の携帯を教えて
具体的な搬入スケジュールは「そっちで決めてくれ」と頼んだ。
「搬入日決まったら俺も飛んでくるから」


オッサンは帰国しました。


周さんから、何月何日にコンテナ積み予定で
内モンゴルから発送は〇〇日の予定で
シンセン到着は〇〇日の予定ですと「予定」の連絡が入った。
何の心配もしてなかった。
あとはシンセンに飛んで「モノ」の最終確認をするだけ。



それが・・・・ですね・・・・
予定の連絡は来たんですが・・・「決定」の連絡が来ないんです。
コンテナ発送しました!の連絡が来ない。



周さんに「決定した?」って聞いても
「知りません、まだ聞いてません」って



どうもおかしい話になってきました。
「P」社長とも連絡が取れなくなった。
「おかけになった電話番号は現在使われておりません」の中国版です。



C社の社長に聞いたんですわ。
「いったいどうなってるの?」
「P」と連絡取れないんだけど



「社長、大変アルヨ」
「Pとモンゴル社長が2人で勝手に商売したアルヨ」
「Pがレアアース全部買って、どっかに行ったアルヨ」
「Pは行方不明アルヨ」



その瞬間思ったこと・・・正直に言いますとね
「Pよ、おまえバカだわ、あれは簡単にはサバけんぞ」



それ以来・・・・レアアースも「P」もどうなったか


まったく解らないんですわ。C社長も知らないって。


確実に言えるのは「P」がサバけるモノじゃないんだわ。
すごく狭い世界のモノなんですね。
もし日本に入ったらオッサンの耳に入るはずなんだけど・・・


「P」はいずこへ・・・ネオジムはどこへ行った?


ちゃんと捌けてウハウハだったり・・・有り得なくはないわ。


周さんとは、今でも仲良くやってます。
仲良くやってますが・・・・
おじさんのことを聞くと・・・・
もう付き合いが無くなって、何にも不知道(プーツータオ)だって


誰か儲けたひと・・・いますか?


いたら返事ください。
オッサンの内モンゴルとシンセンまでの経費を返してください。