クズ屋危機一髪「ソーラーパネルを狙え」

2018/09/17 02:26

みなさま、ソーラーパネルはご存じと思います。
屋根の上で銀色に輝いて「お日様」の光を電気に変えてくれるという
どこのどなたが発明したか存じませんが・・・・・
不思議な、とてもありがたい商品です。

ソーラーパネルの製造メーカーは
日欧米に沢山あったんですが、
あっという間に中国製の安物が氾濫して、
先行メーカーはまったく存在感がなくなってますね。
お値段が高過ぎたんですね

世界中を席巻する中国のソーラーメーカー
彼らが創業して躍進していくのに一役買ったのが
日本の「スクラップ屋」でした。

中国のソーラーメーカーは創成期に、
日本から輸入した安いスクラップ原料で粗悪なパネルを造り、
試行錯誤しながら技術力を蓄積していきました。

中国のシリコンメーカーも試行錯誤しながら
中国でいくらでも産出する「珪石」の精製能力を向上させ
ソコソコの高純度品を生産できるようになっていきました。

山を掘れば高品位の「珪石」がボコボコ出てくる中国です。
日本とは原料コストがケタ違い、当然製品価格も段違いとなります。
そこに高い技術が加われば・・・日本に勝ち目はありません。

ソーラーパネル創成期のころの話です。

当時日本の半導体メーカーは大盛況でした。
とてつもない量のICを製造するため
大量のシリコンウェハーを使用した。

当然製造工程で「シリコンウェハー」のクズが大量に発生。
その中に・・・純度99.999999999%　通称イレブンナインの
ソーラーに転用できる「P型ウェハー」が含まれていた。
この「ウェハー屑」は中国へ輸出され、
ソーラー用シリコンパネルの原料になった。
中国のソーラー用シリコンメーカーは
当時高純度シリコンが作れなかったから、
日本のウェハー屑に目を付けたんです。

中国のシリコンメーカーから注文が大量に入り、
価格がどんどん上がりました。

これは儲かるわいと・・・・
日本ではシリコンウェハー屑の争奪戦が大過熱。
１Kg＝100円もしなかったウェハースクラップ・・・
これが・・・・アッと今に2000円を突破。
オッサンの知ってる最高値は5000円/Kgまで高騰した。
※金の付いてるシリコン屑もあって、それは昔から高価なスクラップでした。

シリコンウェハー屑という狭い業界に
猫も杓子もシリコン、シリコンと「熱病」が流行りました。

オッサンはこの商売・・・・実は「大乗り遅れ」でした。
シリコン屑は持ってたんですが、
自社開発プラントの「合金添加用と脱酸剤」で使うため
マーケットに興味が無かったんですね。
こんなの売っても・・・たかが知れてる。そう考えてた。
そう、ソーラー用シリコン値上がりの情報も持ってなかったんです。

まさか・・・そんな高い価格で取引されてるとは・・・
ぜ～んぜん思わんかった。大チョンボだったわ。

「ええっ？　その商売そんな儲かるの？」
「よし、ウチも輸出しよう」
やっと儲け話に気づいたオッサンは本腰を入れようと動きました。

ブツを大量に持たないと「価格交渉」で足元見られるから、
まずは「ブツ」を毎月30ｔほど確保して、強気で交渉だ！

ウチのアンダー（子飼いの会社）にブツを集められるか聞いた。

オッサン
「シリコン引けるか？　引ける場合の価格は？　引ける数量は？」

アンダーの会社様、数社の回答をまとめますとね
「引けるよ、仕入れ値はメーカー物で2000円/Kgくらい」
「業者モノで2400円ってとこ」
「引ける数量は20ｔ/月は固いよ」

オッサン
「よしわかった！」　ウチの在庫と合わせれば毎月1コンテナは出せる。
「多分集めてもらうことになると思う」
「GOかけるのは、もう少し先ね、まだ仕入しないでいいから」

よし！　ブツの確保は大丈夫そう、次は売り先！
まず中国の半導体バイヤーに連絡した。

オッサン
「ウチのウェハー屑買うかい？」

中国のバイヤー
「安かったら買ってもいいよ」

オッサン
「安いっていくらよ？」

中国のバイヤー
「１Kg＝900円だな」

オッサン
「ザケンなよ、相場は3500円くらいだろ・・・」

中国のバイヤー
「社長ソレハ1週間前の価格ヨ、イマ中国大暴落アルヨ」
「モウコノ商売はヤバイヨ、ワタシ本当はヤリたくナイよ」
「社長だから900円ヨ、他のヒトの話なら500円アルヨ」

オッサン
「わかった、ちょっと考える」

電話を切った。　　

次に国内のシリコン扱う連中に聞く
「シリコン暴落してるって聞いたけど・・どうよ？」

連中A
「うん？　そんな話ぜんぜん聞いてないよ？」
「まだまだ上がるんじゃない？」
「社長持ってるならウチで買っていいよ　3000円ならすぐ買うから」

連中B
「暴落なんてあるはずないじゃん、1万近くまで上がると思うぜ」

困ったなあ・・・・中国のバイヤーはシリコンは暴落すると言ってる。
国内の連中は「相当強気」・・・・

中国バイヤーは信用できる奴だが、シリコンに強いわけでもない。

悩んでるとき・・・・千葉のスクラップ屋から電話が入る。

千葉
「社長、いま近くにいるんだけど、寄っていいかい？」

オッサン
「会社にいるからOKよ」

千葉のスクラップ屋が２ｔトラックの助手席に乗ってやって来た。
トラックのナンバーは「三河」

すぐ立ち話を始める、運転手は乗ったまま。
千葉が積んでる荷物を買ってくれと言いだした。

オッサン
「ブツは何よ」

千葉
「シリコン屑だ、フレコン３つで2200Kgある」
「サイズはちと細いが全部P型で、ソーラーには問題ないらしい」

オッサン
「ふ～ん・・で値段は？」

千葉
「2500円/Kg」

オッサン
「どこのモノ？　混ざり？　一品モン？」

千葉
「運転してるヤツのもので、四日市から出てるらしい」

ここで・・・いやな予感がブルブルした。
名古屋の人間がトラックにシリコン屑２ｔしょって
関東まで来た。このシリコン争奪戦の最中にだ。
バイヤーは名古屋にも沢山いる。
なんてたって日本で一番シリコン屑の出る県は三重県、名古屋の隣だ。
関東よりも名古屋の方が流通も多いはず。
風向きが変わってるのかもしれない。

オッサン
「名古屋さんとは長い付き合いかい？　なんで関東へ？」
「名古屋に売り先あんだろう？」

千葉
昨日知り合いから紹介されたヤツよ。
あいつは茨城の客からピカ線（銅スクラップ）を買う予定で
名古屋を出発したんだが、途中で岡崎の知り合いから
シリコン屑が入ったから持ってってくれと連絡があって、
そこに寄って積んで、そのままこっちへ走ってきたらしい。

明日は茨城でピカ線積むから、
このウェハーは近くで捌きたいってさ。
俺に買ってくれって言うんだが、俺はシリコン詳しくないじゃん、
社長なら買うかもと連れてきたんだわ。

昨日の知り合い？・・よく連れてきたわ・・・・
そんなんじゃ・・中身の信用など出来るはずないじゃん。

風体に年季を感じるから・・・
素人じゃないのは分かる。どうやらプロのシリコン屋だわ。
こいつも暴落情報を掴んでいる・・・・と見た。

お断り価格を出すことにした。

「買うなら500円だ・・・現金払いで」

千葉は運転席の名古屋に伝えた、名古屋の顔がゆがむのが見える。

千葉がオッサンとこに来て言う。
「話にならないってさ」

オッサン
「そのうち・・・その価格でも売れなくなるぜ」

バイヤーの言った通りになった。

半月後には暴落情報が駆け回り、
日本にで買い付けに走り回っていたバイヤーは姿を消した。
高い在庫を半値以下ですぐサバいたやつは優秀よ。
「価格は戻るはず」と倉庫で塩漬けした奴らは仕入れ値の1/10なれば上等だった。