ペカチカほいほいのブログ

ギャンブル歴50年、浮き沈み人生で出会った楽しい出来事の数々。

クズ屋の回想録「だから、やめとけって」

御徒町で宝石商を営む中国人がいました。
見た目は「オリラジの藤森を40歳にした感じです」



取引先スクラップ屋の社長がその宝石屋と仲良しで、
時々ウチに指輪、ネックレス、高級時計を入れたケースを持って来て
押し売りしていきます。



ある日、その社長とスクラップ屋さんが一緒に当店へご訪問。
宝石の話の前に、社長はウチの倉庫で荷物を見て回ります。




その社長はこれから半導体も集荷して、
取り扱いアイテムを広げたいと、ひと儲けしたいと
当店に勉強に来たんですね。



こっちも集めてくれて、ウチに供給してくれる会社は大歓迎です。
早速、倉庫の在庫を見せながら「種類・価値・記号の読み方」など
レクチャーします。



社長さんから質問です。
「この在庫いくらで売れるの?」



「ざっと8千万ってとこですね」


社長さん
「トラック1台で8千万かあ~、それは凄いな」
「鉄クズなら1台で10万円だもんなあ・・」
「よし俺んとこも本気で覚えて集めるわ」


社長さんやる気満々です。
その会社は関東の老舗スクラップ屋ながら、
業界では先進的経営で知られる会社です。




そのとき、中国人の宝石商が喋り出す。
「この商品、俺に扱わせてくれ」
「俺も捌けると思う、ちょっと教えてくれたら捌いてみせる」




「ええっ? あ~~、それはヤメた方がいいです」
「慣れてないと痛い目にあいますから」




宝石商食い下がる
「今どこのバイヤーに売ってるの?」




「香港・シンセン・広州・台湾・韓国・ドバイ・パキスタンってとこです」




宝石商
「上海、杭州、南京、北京は売ってないの?」




「そっちはルートを持ってませんね」
「中国は広東省ばっかりです」
「上(上海~北京)の方はマーケットも小さいですから」



宝石商・・・・いきなり電話をかけ始めた。
どうやら上海あたりの知り合いに聞いてるみたい。


宝石商
「今知り合いに聞いたら上海に興味あるのがイッパイいるって」
「俺が捌けるかもしれないから少し検討させてよ」



大事な取引先社長の友達は「超乗り気」です。





オッサンは困りました。
この品物の売り先はまだ決めてないので
宝石商に売っても問題ないのですが、
素人には荷が重い品物です。
大事な取引先の友達に「損はさせたくない」んですね。




宝石商さんに半導体の知識は全くありません。
彼の上海の仲間も「どの程度知ってるか」わかりません。



彼に売って、結局・・売り先を見つけられず・・・・
オッサンに「買い戻してくれ」とか
誰か買う人を「紹介してくれ」とか
そうなりそうな気がします。



「ヤメタ方がいいですよ、ヘタすると大赤字になります」
オッサンは丁重に「お断り」してました。



ところが・・・老舗スクラップ屋の社長さんも
「ヤラセてみれば、彼は金持ってるし、少々の赤字なんて気にしないよ」
・・・と・・・来るじゃないですか。





オッサンの心境は
「あんた・・・無責任なこと言うんじゃないよ」
「半導体だって、それなりにノウハウが要るんだよ」
「安物売りつけられたなんて、こっちが恨まれるのは勘弁なんだよ」



しかし粘ります。



2人は盛り上がってます。
「多少の赤字は授業料だよな!」
「そうそう全く問題なし!是非やりたいね!」
こんな感じ・・・・



オッサン聞いてみました。
「どんな感じで捌くつもりですか?」


宝石商
「この半導体の商品リストと少しのサンプル、あと写真を撮って上海へ行く」
「向こうで仲間に頼んでバイヤーを探してもらって交渉する」
「さっき8000万って言ったよね?」




「そうです。全部で8000万なら出しますが、置き場渡しですよ」
「パッキングはやりますが、輸出手配、フレートはそちらの仕事です」



宝石商
「OK、それで問題ない、これからすぐ動くよ、いつまで待てる?」



「10日以内にYES/NOを返事ください」
「OKならキャッシュ・オン・デリバリです」
「当日に現金引き換えでお渡しします」
「NOなら別のとこと交渉します」
「絶対無理しないでくださいね」



宝石商にチャンスをくれてしまった。



この上海人の宝石商は超せっかちマンだった。
3日目にOKだ、ヤルと言ってきた。



彼が言うには
リストを見せたバイヤーから「とても興味がある」と言われたらしい。
「1億2000万」で交渉中らしい。ほぼそれで決まるだろうと言う。



問題がひとつ、宝石商は上海バイヤーから、
リストの中の「一番価値のある半導体」は
ハンドキャリーで運んでくれと言われたとのこと。
つまり浦東空港を「NoTAX」で通過するってこと。



一番価値のある半導体・・・・
「ALTERA」と「XILINX」のことか・・・・
このICはモノによるが今回のリストには
「定価1粒7万」ってのが200粒ある。
「定価1粒20万」が100粒ある。
ほかにも定価3000円~20000円が3千粒以上ある。


※定価とはこの半導体が発売された当時の価格だ。
※我々のモノは未使用品だが長期ストック品で価値は落ちている。
※新車だがモデルチェンジ前のタイプって感じ。型落ち品である。
※ウチの仕入は1粒平均2000円程度よ。
※ICは1粒0.1円~20万円以上まであります。



もしこれを発売当時の定価に換算すると2億円以上となる。
でもこれは「長期保管の型落ち品」
実際の取引価格は・・・・末端で当時の1/4ってとこだろう。
しかし税関の連中に現行流通価格は通用しない、
見つかれば・・・発売当時の価格で課税されるだろう。




オッサンは中国の半導体関税が当時いくらだったか知らない。
たぶん17%くらいかと思うが、ウチの中国向けに出荷する半導体は
国内でバイヤーに売るから、関税の心配はしたことが無い。
密輸だろうが正規だろうがバイヤーの責任。
摘発されようが、無事だろうが・・・関係ない。
ウチは金さえ入ればOK、あとのことは知らないがスタンス。



もし空港でハンドキャリーを税関に摘発されると・・・・
4000万くらい徴収されるかも?  ヤバイ橋だわ。




「大丈夫?税関で引っかかっても知らないよ」


宝石商
「大丈夫!大丈夫! 協力してくれる税関職員がいるから」



何でも・・・・宝石を買い付けて中国に持ち込むとき
その職員のいるゲートを通過するらしい。もちろん賄賂は払い済。



宝石商は8000万を置いて、一番価値のある半導体7箱を
車に積んだ。残りは輸出用のパッキングまでウチでやって
運送屋のトラックで横浜港へ向かう。




だから・・・・やめとけって言ったのに。


宝石商は浦東空港に着くと
いつもの通関レーンへ向かったらしい。


そこに買収した職員の姿は無く、
やむを得ずトボけて通過を試みるもアウト!!


連行され、取り調べ中にかなり抵抗したため、
7日ほど拘束された。



一番高価な半導体は没収されたらしい。