ペカチカほいほいのブログ

ギャンブル歴50年、浮き沈み人生で出会った楽しい出来事の数々。

クズ屋の出会った「しょぼいクズ屋」

オッサンは愛をこめて自分を「クズ屋」と呼んでます。
リサイクル業なんて言いません。
ひと様が触らない「クズ」を集めて、売って、生計を立ててました。
今は自由人でございます。



クズ屋さんにもいろいろ有って
①鉄クズ屋さん     文字通り鉄スクラップ
②アルミ屋さん     文字通りアルミスクラップ
③非鉄屋さん      銅・鉛・亜鉛・貴金属
④ステンレス屋さん   文字通りステンレス
⑤特金屋さん      レアメタル・レアアースなど
⑥廃プラ屋さん     プラスチック全般
⑦エンジン屋さん    車のエンジン専門
⑧部品屋さん      半導体・液晶・バッテリーなど電子部品全般
⑨その他


①~⑨を何個か同時に取り扱ってるケースがほとんどです。
①の鉄スクラップ屋はアルミもステンも銅も扱います。


100年続く老舗も有れば、出来立ての会社もありますが、
長く続いてきた企業が多いです。
3代、4代と続いて、しっかりガッチリ金も持ってます。
日本人の比率が少ないのも特徴ですね。



さて、起業して歴史の浅いウチの会社ですが、
オッサンはサラリーマン時代含めると、
リサイクル業界経験が15年ありました。


特にレアメタル・レアアースが得意で、
当時珍しい存在だったと思います。
メーカーさん(特に電子機器業界)に頼りにされていました。


オッサンに相談すれば「リサイクルの問題が解決する」
環境担当者だけでなく設計部署からもお呼びがかかります。



東京の青梅にパソコン部品を作る会社がありました。
ハードディスクの部品です。
ハードディスクはレアメタル・レアアース・貴金属を使います。
その工場の研究開発部署からオッサンに「買取依頼」がありました。


何かというと・・・
プラチナとロジウムのターゲット(簡単に言うと地金みたいなもの)と
ネオジム、サマリウムなどの研磨カス  ※レアアースです。


プラチナはご存知のとおり「宝飾品」に使われますね、
ロジウムはご存じないかもしれませんが、
プラチナより3倍も高い金属です。触媒などに使われます。


とにかく・・・・かなり高価なスクラップでした。



オッサンは訪問してこう言いました。
この状態だと形状が複雑で、それぞれ構成も異なる、
合金の比率もまったく違う、確かな価値を見積もることはできない。
「全量預かって、白金は〇〇鉱業に出して精製しましょう。」
「レアアースはウチで生成します」
「そして買取価格を出します」「ねえねえ、そうしようよ」



検討して後日連絡くれることになり、吉報を待ってました。



多分出してくるでしょう、この会社にはオッサン信用あります。
国内外30か所以上も工場のある超大企業さんです。
国内外の工場15か所と取引してました。タイだけでも3社ありました。


問題は、工場決済なのか、本社経理決済なのかくらい・・・
そうなんです、この青梅工場とは初取引で取引口座が無いんです。


工場から連絡があって「精製後の決済」でOKが出ました。
ただ・・・担当者がこう言います。
「口座がないから出入りの〇〇金属を通してくれ」


できれば直口座でやりたいのですが「※スポット品」です。
※定期的に発生するクズではなく、試作や実験で使った余りクズで
数年に一度しか発生しません。


「そうですね、じゃあそうしましょう」とお受けした。


窓口となってくれる「〇〇金属」さんが
そのクズを持って当社へお越しになりました。


初対面です。いろいろお話をして、ウチの得意なもの、
先方さんの得意なものを聞いて、これを機会に協力しましょうと
意気投合して帰って行かれました。設立はウチより古いですが、
業界では青二才といわれる創業15年くらいの会社でした。


オッサンはそのターゲットスクラップを「プラチナ精錬」では
世界最強技術を持ってる「歴史ある」上場企業へ持ち込みました。
ここなら青梅の工場さんも安心納得するでしょう。
もちろん安心はできませんけどね。スクラップ精錬企業なんて
「泥棒」と思ってますから、まあウチもそうですけどね・・・



その精錬企業から「プラチナとロジウム」の精製が終わった、
清算するから来てくれ・・・と連絡があって工場まで出向きます。



清算価格は・・・いろいろ経費引かれて1760万円です。


ん?  今回はまじめにやったな! 
この間プンプンに怒ったのが効いてるな!


オッサンはこの清算価格に大満足です。
この金額は15日締め、翌月末に払い込まれます。
〇〇金属への払いは急ぎます。
クズ屋同志の商売・・・基本はCOD(CASH ON DELIVERY)です。



精錬企業が発行した回収計算書(データ)を〇〇金属に見せて、
「ウチはこの価格から経費と利益で7%貰うね」
「だいたい120万円差し引いて払うね」
〇〇金属
「了解です、ビックリしました、高いもんなんですねえ」と驚いてる。

「白金ですからね」「明日振り込んどきます」



しばらくして
青梅工場の研究開発部長から電話がありました。


「支払い価格がたった460万ってどういうことじゃあ!!!」
「ロジウムだけで1500gあるのは分ってるんじゃあ!!!」


超激怒してるわけです。


ここで・・・即・・・ピンと来ないといけません。
「何言ってるんですか? ウチは知りませんよ」なんて態度はダメです。
「ウチは〇〇金属に1600万払ってますよ」と言ってもダメです。
「連中がアホほど抜いたんですよ!」とも言っちゃダメ。


とにかく・・・・
「何か話がおかしいですね」
「部長ご指摘の通り、そんな価格で済むはずは絶対ありません」
「どこかで、なにか、勘違いみたいな、行き違いみたいな」
「何か間違いが起きてます」
「ご安心ください、このオッサンが必ずや真実を明らかにします」



どえらい剣幕の部長さん
「わかった、とにかく早く調べて連絡しろ!」
「本社の環境部長もオカシイ、アヤシイといってるからな!」



ひとまず時間稼ぎは成功しました。
本社の環境部長に睨まれるとヤバイです。
全工場出入り禁止なんてことも頭に浮かびます。



まずは〇〇金属に電話ですよ。
「あんたら・・いったいイクラ抜いたわけ?」
「ウチは1600万払ったでしょ、1200万も利益抜いたわけ?」
「清算書の回収正味量とか見せなかったわけ?」



〇〇金属
「いやあ・・・実はそうです。」


どうやら・・・
こんな小さい「ターゲット板」にそんな大量のプラチナがあるとは
「メーカーも思ってないだろ」と考えたって。


工場の環境現場の人に「さりげなく」サグリを入れたら
「2~300万になればいいんじゃないの」
なんてコメントもあったらしい。
そこら辺を総合的に判断して「460万円」の値段を出した。


バカじゃないの!


ウチが悪者・ドロボウになってるんだけど・・・・


オッサン
「工場の技術部長にはどこかで行き違いがあるはずと言ってある」
「ウチから〇〇金属への報告の仕方がマズかったとも言ってある」
「なんとか取り繕って怒りを納めんとヤバイよ、わかってる?」


〇〇金属
「全部お任せします。助けて下さい。」



オッサンは青梅工場の技術部長さんへ連絡してこう言った
「早い時期に精錬をした〇〇鉱業へ同行してください」
「この件は何も隠すことはありません」
「価格は〇〇金属がケタを間違えたんです」
「計算書に解りにくいところがあって、〇〇金属も勘違いしたようです」


そこまで庇うか? ってくらい庇いましたよ。


精錬した会社へオッサンと〇〇金属の社長でまず行きました。


先方の課長にオッサンが経緯を説明。
「かくかくしかじか、こういうことで〇〇電機社が訪問します」
課長さん
「いいよ、いつでも会うけど、ホントのことしか言わないよ」
※ホントのこととは回収精製した数量とウチに払う予定の金額のこと


ご訪問当日・・・・・
大企業と大企業を、〇〇商店とウチという
超アヤしい弱小企業が取りつないだ「プラチナ回収プロジェクト」
この行方はどうなったでしょうか・・・・・



タクシーが4台入って来ました。電機会社さま「延べ12名様」ご到着です。


工場から6名、本社から6名です。表情は険悪です。
大問題・大事件だったんですねえ・・・・と自覚したわ。


お迎えする精錬企業は・・・・工場長以下4名、もちろん自然体です。


そしてオッサンと強欲会社〇〇金属の社長  結構緊張してます。



こちらへどうぞと・・・・お嬢様が案内してくれて
玄関で靴をスリッパに履き替えるお手伝いしてました。
当然大企業様が先です。弱小企業はスリッパなんか要りません。
まあ数足りてオッサンも極悪社長の分もスリッパありました。



スーツ姿の電機会社様へスリッパを手渡し、靴をゲタ箱に入れる
弱小企業のオッサンです。〇〇金属の社長は突っ立てるだけ。


スリッパ私の最中でした。
ん?  あの方は? 知ってるぞ・・・・


みいつけた! オッサンが創業した当時に「癒着」してた〇〇さんじゃない。
ええ? アンタが今の本社環境部長??  あんたが? ウソでしょ?
「ええ? あんた今本社の環境部長なの?」
「去年まで川崎工場の総務部長だったじゃん」


さらに・・・良おく知ってる横浜工場の環境課長も本社ご一行にいる・・・
皆さん本社に栄転してたのね、それはおめでとうございます。
さらにオッサンのあの時の「貸し」も・・ありがとうございます。



向こうもビックリ、
「なぬ! この件アンタが噛んでるのか?」って感じ。
「これは参った・・・余計なこと絶対しゃべるなよ」って感じ。


会議は普通に始まり、あっけなく終わった。


今回の件は「オッサンの会社」が回収計算書を「〇〇金属」に送った際に
説明不足で〇〇金属の経理が良く理解できず、
回収計算書の金額を読み違えてしまった。
その間違った金属を記載した「仕切り書」を送ってしまった。
間違いと気づくのが遅くて大変迷惑かけた。


実際の金はまだ精製企業から支払われてないので訂正したい。
プラチナのホントの価値は今精錬企業が説明した通りで、
横着する気はなかった。つまり誤解が重なった結果で誰も悪くない。
それで勘弁してやりましょう。



本社環境部長の必死の応援と元横浜環境課長の相槌で会議終了。


そこから先は和気あいあい、精錬工程の見学やらをして


お・わ・っ・た  


当然〇〇金属はウチが払った全額を電機会社に差し出すハメとなる。


オッサンは可哀そうだからと、
ウチの利益の半分を〇〇金属に渡してやった。



それは・・・・実は可哀そうではなく、作戦・コマセよ。
真の狙いは〇〇金属にその電機会社から「オイシイ半導体部品」などを
引いてもらうための手付金みたいなものよ。


わっはっはっはっは・・・・



半年後!  日刊工業新聞


〇〇金属株式会社 会社更生法適用・・・・
負債総額3億円  


だからガッツリ抜こうとしたのか・・・・
もしあれが見逃されて1200万利益あったら・・・・
一息付けただろうになあ・・・・



その青梅工場も・・・・・不振により閉鎖と決定だって。


景気の悪いころの話でした。