ペカチカほいほいのブログ

ギャンブル歴50年、浮き沈み人生で出会った楽しい出来事の数々。

ミサイル部品を取り戻せ。クズ屋の事件簿2

オッサンは広義で言えば「スクラップ屋」だった。※いまも時々スクラップ屋
もう少し狭めると「電子部品屋+レアメタル屋」となる。
業界用語で言えば「部品屋」兼「特金屋」と言う。


そしてもう一つ・・「回収屋」をやっていた。


メーカーから流出した「世に出回ってはいけない」モノを回収する仕事だ。


思い返すと色々有った。命からがら逃げたことも片手じゃ足りない。
もう時効だし、いま細々生きてるだけだから話しても良いだろう。


一般的なスクラップ処理の流れはこうだ。
製造工場から「償却品」と称される廃棄品を引き取り、
自社工場で解体して素材ごとに分け、それを鉱山会社へ送る。
電子機器は貴金属の宝庫だ。鉱山会社で金・銀・銅・パラが回収される。
廃棄された携帯電話・パソコンの山を「都市鉱山」などと言う。


オッサンはそこにひと手間加えた。基板から半導体を抜くのだ。
これならメーカーに迷惑は掛からない。部品の一部を再利用するだけだ。
半導体は高値で売れた、だからメーカーからの買値も高くつけてやれる。
お互い納得してビジネスは続いて来た。



我々が付き合う部署は「環境課」とか「エコ事業部」とか「リサイクルチーム」とか
カッコいい名前は付いてるが、所詮ゴミとクズを扱う部署。
マネージャークラスにエリートはいない。
何かで問題を起こしたか、仕事で使い物にならないか、上司に反抗したか・・・・
理由は様々だろうが・・・干された連中の居場所だ。


オッサンはそんな彼らに「良い思い」をさせてきた。
彼らを手中に収め「良いモノ」はすべてウチが引けるようにしてきた。
ゴルフ・酒・女・旅行・小遣い・・・安いもんだった。




スクラップの横流しは昔からある、最近もちょくちょく聞く。
どこぞの大手カレー屋さんが「異物混入」のコロッケで痛い目にあった。
あれは業者を間違えてる。


おそらく被害にあった会社の担当者が買収されてたと思うが、
あんな低レベルのとこに流したんじゃバレルに決まってる。



昔から「償却品スクラップ」の払い下げには「厳しい決まり」がある。


持ち出したスクラップは追跡され、
契約通りに「跡形もなく」処理したか、証明を求められる。
全ての現場に「メーカー社員」が立ち会い、監視して、最後まで見届ける。


要は・・・・メーカー社員を抱き込めば・・・何とでもなるってこと。



昔・・・20年前かな? その頃の話
中国、シンセンの電子部品マーケットで「有ってはならない」ものが出た。


カメラ部品だ。爆発的に売れたゲーム機に使われていた。
そのゲーム機の販売に「ペンタゴン」が難色示したのは有名な話だ。


何故ゆえ・・・米国防省が?  


ミサイルの誘導に使われるからだ。




オッサンに大手電機メーカーの役員から電話が来た。


「カメラメーカーから頼まれた、その部品を回収してほしい」


「どれくらい流れてるんですか?」


「はっきりした数字は不明だが、3000個くらいと言ってる」


「もう売れちゃってるんじゃ・・・」


「店頭にあった分はこっちで買い占めた。」


「さすが慣れてますね、いくらで何個買ったんです?」


「1500元で60個」  ※それは高い、足元見られてるわ。


「幾らで買い戻します?」


「安いに越したことはないが、残ってるかどうかも不明だ」
「その調査も含め飛んでくれんか?」


翌日、オッサンは「キャセイ」で香港に向かった。


香港の取引先「社長連中4人」に状況を聞くため、まず香港に入った。


その社長連中は「完全に知ってる」はずよ。


完全に知ってるどころか「流した張本人」がいるかもしれん。


連中こういう時は「口が堅い」、「知らない」の一点張り。


オッサンの心境は
※絶対知ってるだろ、さっさと残り買い戻してマカオ行こうぜ。



オッサンは当てずっぽでウソ言った。


「この商品・・・千葉の工場から出てるはずなんだわ」
「千葉の工場と言えば✖✖金属の得意先だんべ」
「この件で✖✖金属は出入り禁止、損害賠償も億単位でいくぜ」
「もしあんたら噛んでたら、当然✖✖金属はあんたらにも損害請求するよ」
「アメリカの国防省まで関係してるから・・・エライことになる」
「俺は知らんからな」
「明日俺一人でシンセン行って探すけど」
「無かったら香港の米領事館行かなきゃなんねえから」
「早くどっか心当たり電話してみなよ」


1時間後・・・・解決した。2000個残ってるとのこと。
残りは売り払って不明らしい。


誰がこのブツを捌いたか?  これは聞かねばならない。
これを扱ったヤツに2度と流せないのだ。


ブツのありかを探し出した連中のルート・ネットワークは追及しない。
そんなの知ったこっちゃない。
ただし誰が捌いたか、これは聞く必要がある。
答えなきゃ連中の評判は落ちる。
連中は日本のクズ屋から「売り先」として永遠に外される



もっとマズいことも起きる。この件はメーカー同士で共有される。
これから日本中の企業がスクラップ管理を徹底する。
いまより厳しい払い下げ条件になって、
破砕処理後に引き渡しなんてなったら
ウチの生命線「半導体部品」が使いものにならなくなる。


オッサンは聞いた
「誰が流した?」


一番若い社長の「L」が答えた。
「俺の知り合いだ、本職はバッテリー屋だ。ヤツが福建省の連中に流した」


オッサン
「説明頼む、日本帰ってメーカーに報告する」


L社長
「俺が✖✖金属から受け取って、ここに陸揚げしといた」
「ある日ヤツがバッテリーを見に来た、そのとき俺は居なかった」
「ヤツはウチのスタッフに社長とは「話し」ついてるとウソ言って持ち出したんだ」


オッサン
「そいつは幾ら置いてった?」


L社長
「2890台で20万HKドル」  ※約320万円ほど  1台1000円チョイかな


オッサン
「それ・・・ゲーム機の状態だったのか」


L社長
「そうだが、肝心の基板は壊されて電源はいらなかった」


オッサン
「CMOSかCCDか知らんが、カメラ、メモリ、音声ロム・ってとこか」


L社長
「中身見る前にヤツが持ってったから解らん」


オッサン
「明日回収したい」
どうしても回収しないと、アンタら日本で商売できなくなるぜ。
※脅しじゃ無く・・・そうなってしまうのだ。


4人が言う
「社長・・・明日夕方ここに来てくれ、ここに持って来るから」
「そしてパッキングして日本に送り返す」


そうだな・・・シンセンは行かないほうが良さそうだな、承諾した。


OK、明日夜8時にここへ来る。


オッサンは・・・・・ホテルに向かった。カジノはいかなかった。


次の日


間違いなく「あの爆発的に売れたゲーム機」が戻っていた。
メーカー側で出荷前に「ドリル」当てたようだ。中心付近に1か所穴が空いてる。
基板はドリル貫通だ。製品としては使い物にならない。


しかし・・・あんたら流石だわ。ドリル開けも・・・・
急所を微妙に外してメモリが傷つかないとこを狙ってる。
担当者を教育してるね、たいしたもんよ。


「さて・・・いくら払えばよい?」
とりあえず「買い戻し費」は俺が払っとくけど、
俺はメーカーに請求する。
メーカーは✖✖金属に請求する。
✖✖金属は「L社長」にアシが絶対つかないように・・・と・・・
念押しして渡したはずだから激怒してるはず。
相当な額を「L社長」に請求するだろう。


損しなかったのは「福建省」の部品連合だ。


買い戻し費用は「不要(プーヤオ)」


あいつらで処理するらしい。


でもオッサンはメーカーに請求する。1000万かな・・・



後日談①・・・・結局某役員に泣かれて150万でした。


後日談②・・・・噂が聞こえてきました。
✖✖金属に泥棒が入ったらしい。盗まれたのは解体処理する前のゲーム機約3000台。
犯人はいまだに不明らしい。


おい! またその手か。もう通らんだろ、それは・・・・


えっ? それで厳重注意だけで済んだ? 


今後工場にカメラ設置して警備厳重にする?


シャレになってるわ。座布団1枚。