ペカチカほいほいのブログ

ギャンブル歴50年、浮き沈み人生で出会った楽しい出来事の数々。

クズ屋「キングコブラ」で腰抜かすの巻

タイのバンコック郊外に
日本の電機メーカーが大挙押し寄せた工業団地があります。


某電機メーカーだけでも9つの工場が立ってました。


その電機メーカー本社の依頼を受け、工場のリサイクル状況確認・改善指導で
オッサンはタイへと旅立ちました。起業して5か月目のことです。


もちろんエコノミー席、当時TGは後方の席で喫煙可能でした。
タバコぷ~かぷか吸いながら6時間のフライトを終え、タイへ到着です。





電機メーカー提携の安ホテルへチェックイン。
最終的に電機メーカーさんへ請求するのですが、とりあえず自分持ちです。
1泊 日本円で1200円ほどと記憶してます。



翌朝4時に電機メーカーさんが迎えに来てくれました。
工場の日勤開始はは朝8時からとのことですがずいぶん早いお迎えです。


えらい遠いとこかと思いきや、混んでなければ40分だそうです。
ただ朝の渋滞がハンパなく朝5時過ぎると工場まで3時間かかるらしい。


そんなこんなで1時間走って5時過ぎに工場到着です。


朝8時過ぎから工場長さんに工場案内を受けることになってるんですが、
まだ3時間ほどあります。リサイクル提案の資料など確認しながら
お待ちしていました。



さて、この工場は「テレビ工場」でした。


当時のテレビといえば液晶ではありません、ブラウン管テレビですね。


オッサンは「ブラウン管テレビのリサイクル」で世界初のアイディアを
持って来たんです、
自分で言うのもなんですが、まさに画期的なアイディアでした。



工場長さんがお見えになって、挨拶もそこそこ、現場へ行きます。


工場長
「ここが廃材置き場です、この蛍光体が厄介で困ってるんです」
「タイでは処理する工場も無いんです」
「日本に送って処理するにはバーゼル法に抵触します」
「めちゃめちゃ困ってます」



「楽勝です、全部日本に送ってください、」



工場長
「????日本に送るんですか?」



「そうです、このGとBの粉には亜鉛が50%以上含まれています」
「有価物として日本に送ればバーゼルに抵触しません」
「このRの粉はユーロピウムとイットリウム(レアアース)です」
「これも有価物で購入します」



工場長・・・・・今にも泣きそうなくらいに喜んで
「どういう風に進めればいいでしょうか?」




「現場担当者さんにやり方教えますので呼んでください」



現場担当者が4人やってきました。現地の方です。
オッサンが言います。
まずRGBの粉が混ざってるのがある、これはダメだから選別する。
オッサンはいきなり袋の中の泥に手を突っ込んで
「白い粉」と「黄色い粉」と「グレーの粉」を分け始めました。
これはコッチの袋、それはアッチの袋、アンダスタンド?


「解った?」


オッサンはたった数分のお手本作業で全身真っ白けです。


現地の連中・・・・・ビビりやがんの・・・・
だれも手を出しません、有毒な粉と思ってるようです。



おまいら・・・クズを扱うのはなあ・・こんな風にやるんじゃ!
目で見て、手で触れて、舌で舐めるんじゃああ・・・・



大丈夫って、すぐ死にはしないから・・・将来は分からんが・・・



そこへ工場の社長(日本人・本社で部長クラス)が登場!
オッサンを見て呆れかえってます。
「なんじゃコイツは、正気か?」そんな顔です。


社長が来たせいか・・・・
渋々・・・・連中もやり出します。
オッサンは率先垂範・・・何事も無いように進めます。
そのうち連中も仕分けのコツをつかんだようです。
取り合えず1袋分の仕分けを完了。
1時間ほどお手本見せると、オッサンも現地社員も真っ白けです。



社長と工場長が言います。
「やり方は分かった、明日から専用の作業服とマスク用意する」
「今日はヤメ」 ※多分こんな汚い作業は現地人もしたことないでしょう。



本日オッサンは作業服を5着用意してました。
まず1着目はゴミ箱行きです。



続いて・・・・別のクズ置き場へ
そこはブラウン管テレビの心臓部「電子銃」のスクラップ置き場です。



これはタイの地元鉄クズ屋が「雀の涙」で買ってくれるそうです。
処理先は困ってないが、価格は高い方が良いと工場長が言います。
実はオッサン今回の狙い目はこの「電子銃」でした。
電子銃スクラップを「ガンパーツ」と言います。



このガンパーツにはニッケルが豊富に入ってるんですね。
毎月20tも発生するようです。
現地スクラップ屋の10倍の価格で買っても日本に持って帰りたいブツです。


オッサンは「ぜひガンパーツを売って欲しい」と頼みました。



工場長さんは「売るのは問題ないんだが、今の業者をどうするか」
これが問題と言います。



よくよく聞くと地元の顔役が社長で、どうも裏の顔もあるらしいとのこと
地元のヤクザみたいなものでしょうね。



あまりコトを荒げて既存業者とトラブって、
メーカーさんを巻き込むのは本意ではありません。
ガンパーツは諦めることにしました。



9工場巡回の初日です。すでに蛍光体は決めました。
残り8工場からオイシイのがあることに期待しようと
このガンパーツは諦めました。



余談ですが、この判断は最善だったようです。
数年後、別の電機メーカーのインドネシアにあるテレビ工場へ
日本のスクラップ屋が乗り込んで、ガンパーツを取ったんですが、
日本輸送する寸前に現地工場の「払い下げ担当者(日本人)」が
射殺される事件が起きてます。
犯人は地元スクラップ屋が雇った「殺し屋」だったようです。
これにビビったメーカーは日本のスクラップ屋を追い返しました。


さて、真っ白けになったオッサンはきれいな作業服に着替えました。
着替えたオッサンに社長と工場長がランチに行こうと誘います。
何が食いたい?どっちがいい? 選べと言います。
①日本からのVIP用  高級 和食あり。
②日本人工員向け   普通の社食
③現地向けのキャンティーン 屋根だけエアコンなしの社食


当然③です。オッサンは現地が好きです。


なんか・・・しぶしぶ2人とも同意してキャンティーンへ到着。


ドラム缶にタイ米がゴッソリ入ってるんですね。
そこから大皿にライス大盛にして、
好きな料理をライスの上にぶっかけていきます。
最高にうまかった!(バナナの唐揚げ以外は・・鳥唐と勘違いした) 



午後から2つ目の工場へ行きました。
そこはパソコン部品工場なんですが、クズ置き場の管理が悪いんですね。


横を小さな川が流れてて。置き場は屋根は有るが壁の無いとこ。
雑草ぼうぼうです。いろんなものが周辺に捨ててありました。


この工場での狙いはコバルト、レアアース、白金です。
HDDに使われてたマグネットの取り出し作業を指導してるとき、
近くにロープが数本捨てられてました。
ロープです。どう見てもロープですよ。



それが・・・そのうちの1本が・・・・
ニョロニョロとオッサンめがけて走り出すじゃあ~りませんか!



腰が抜けました。




全長2m以上だったと思います。


現地人が棒でひっぱたいて殺したのが「コブラ」でした。


ここではよく見るそうです。


いたるところに現地語で「コブラ注意」の看板があるそうです。


たまたまこの日の気象条件がコブラの出やすい気候だったそうです。


コブラは1匹だけで、他はロープだった。


コブラの種類が「キングコブラ」かは不明ですが・・・・


タイトルはキングコブラにしております。



そんなこんなで初日の工場視察は午後3時に終了。


テレビ工場の社長が「社長専用車」を貸してくれて、
ホテルまで運転手付きで帰ったんですが、3時間かかった。



その後「ジムトンプソン?」だっけか・・・・

シルクのネクタイで有名なショップまで連れてってくれました。




さて、テレビ工場から発生する蛍光体屑は通関時に
クズかゴミかで「通産省」とスッタモンダしたのですが、
無事国内に搬入して、青森県の亜鉛工場でリサイクル原料で使うことができました。



蛍光体とはカラーテレビの3色(RGB)を出すための塗料みたいなものです。
それに亜鉛とレアアースを使います。
当時この厄介物を処理できる工場は日本にも無かったのですが、
岩手の精錬会社に「こんなスクラップが有るよ」と提案すると、
興味を持った技術部長さんが「リサイクル方法」を確立してくれた。
電気メーカーも亜鉛メーカーもオッサンも大喜びのリサイクル提案でした。



クズ屋は無理すると射殺される世界です。